2019年転職市場とマクロ経済

まず言っておきたいのは、2019年の転職市場は好景気による人手不足を背景に、売り手市場になっています。とは言っても、業種により差がありますので、以下に詳しく紹介していきます。

転職市場は売り手市場

転職・求人サイトの大手であるdodaによると、2019年上半期に前年よりも求人数の減少が見込まれたのは金融業だけでした。近年の好景気に伴う人手不足の中、採用数を増やす企業は増えているため、有効求人倍率は歴史的な水準にまで上がっています。

基本的に東京五輪まではこの傾向は続くだろうと見られていますが、2019年3月の景気動向指数が「悪化」と判断されるなど、国外の影響を受けて景気の減退も見え始めています。

求人数の伸びが期待できる職

営業職

景気が良いことや、将来の人材確保のため求人数の増加が見込まれます。特にソフトウェアの会社でその傾向は顕著なようです。Web広告の営業など、今勢いのある職業に関する営業の求人も多いでしょう。また、中途採用で、過去景気が悪くあまり採用ができなかった世代の人材を採り直す動きも盛んなようです。

人事職

就活ルールの変更に伴う採用担当者の負担増や、企業の社員増による給与計算、社会保障手続き業務の増加の影響で需要は拡大しています。そのため、人事の経験があまりない方でも採用される可能性が高くなっているようです。

グローバル化の影響から、英語能力の高い人材を求める傾向もあるそうです。

経理職

こちらも人材不足が叫ばれています。経理業務は3月から忙しくなるようなので、その前数ヶ月が転職市場は活発になります。

キャッシュフロー分析、IPO経験、海外経験などを持っている人はより市場価値が高くなることが予想されます。

法務職

経験値によらず、多くの人員募集が行われています。

社員の不祥事や製品の不備、ビジネス上の司法的対立など、求められる理由は多くあります。また、グローバル化による海外進出の増加に伴い、グローバルに活躍できる人材の市場価値も高くなっています。さらに、近年は5GやIoT、シェアリングエコノミー、自動運転など新たな産業が次々に誕生しています

このような新しい分野では、そもそも法律の整備がなされていないことがあります。こうした業界についての経験や知識も需要が高まっていると言えます。

緩やかな伸びが期待できる職

企画・マーケティング職

経営企画や事業企画などは堅調に求人がなされることが予想されます。

マーケティングに関しては、Webマーケティングの伸びが求人数を押し上げています。Webマーケティングという言葉は抽象的ですが、オンライン上で客を集め、商品やサービスを売るための施策のようなものです。

例えば、Google検索で自社のサイトが上位に表示されるようにしたり、お客さんにクリックしてもらう広告を作ったりします。インターネット広告が絶大な影響力を持つ現代だからこそ需要の高い職業だと言えます

クリエイティブ職

Webマーケティングと同様に、WebディレクターやWebデザイナーの市場価値も高まっています。クライアントの要望をしっかりと理解し、それを表現する力があれば、引く手数多と言えるでしょう。

IT・通信

世界で最も影響力のあると言っても過言でないIT業界において、ITエンジニアは大変重要なやくわりを担っています。

GAFAなどの世界的企業間では人材の争奪戦が起きており、有能な人材の囲い込みが加熱している状態です。データサイエンティストやプログラマー不足は特に日本で非常に深刻な問題となっています。

ビッグデータの時代なのにそれを正しく解析・分析し、理解することのできる人材は日本にはほとんどいないと言われていますし、pythonやjavaといった言語を書けるだけで年収が格段に上がるような状態です。

電機・機械

IoTやAI、自動運転、EVの興隆を背景に、安定した需要が望めます

これらの技術は確実にこれからの5年、10年で大きく発展し、世界を変えるでしょう。電気によって動く自動車やバスが路上を通り始め、それらは自動運転機能により、運転手が何もしなくても目的地に辿り着きます。

車の中で運転する必要のない運転手はAIスピーカーに向かって、読みたかった本や日用品を購入するように頼みます。技術発展は指数関数的に起きていると言われていますから、このような世界になることも確実だといえます。

そのため、産業の発展に伴い求人数も増加するでしょう。ただ、業界によっては米中貿易摩擦の問題を受け、一時景気が悪くなることも考えられます。

化学・素材

第4次産業革命により、新たな産業が続々と生まれているため、素材開発や品質管理といった分野の需要も見込まれています。
特に日本は発展途上国への部品輸出が多いため、半導体や自動車関連の企業での需要が高まっています。

建築・土木

2020年オリンピックに向けて建設業は活気を帯びています。

ただ、開催まであと1年となりましたので、これからは実際に現場で建築作業をする人が多く募集されるでしょう。

そういったブルーワーカーの人以外では特別恩恵を受けることはないかもしれませんが、好景気な時代ですので、住居の建て替えやリフォームなど大きな買い物をする人は多いと予想できます。

販売・サービス

塾講師などの教育関連の仕事やテイクアウト商品の製造・販売といった仕事の需要も高まっています。

教育にお金をかける傾向は強く、好景気も味方して講師不足が起きています。また、近年は中食と呼ばれる、テイクアウトして食べる物の市場が拡大中です。

メディカル

世界的な金余りの状況のおかげもあって、バイオ系企業や製薬会社に資金が流れています。

武田薬品がシャイアーを買収したり、バイオ系のベンチャーが時価総額を急上昇させ話題となるなど、活気があります。そのため、研究職での採用は活発に行われる見込みです。

事務・アシスタント

ここまで多くの職業で人手不足が叫ばれているのですから、これから深刻な少子高齢社会になる日本は事務・アシスタント職も需要が高まっているのは自明でしょう。

特に経験のない方でも就職できる可能性は高いと言えます。

求人数の減少が見込まれる業種

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金融業

金融業では現在、大幅な人員削減が行われています。というのも、銀行や証券会社などでは業務の機械化、システム化が進められています。

三菱UFJは950人相当の人員を削減すると発表しましたし、ゴールドマンサックスのトレード部門では百人単位でいたトレーダーが数人にまで減らされたというのは有名な話です。

低金利政策で銀行のビジネスモデルがダメージを受け、トレードもAIによる高速取引が着目されています。また、ファイナンスとテクノロジーを掛け合わせたフィンテックも開発が進んでおり、今後も人員カットは進むと考えられます。

注意すべきリスク

米中貿易摩擦

目下問題となっている米中の貿易戦争からは目が離せません。2018年7月にアメリカが知的財産権を侵害しているなどとして多額の関税を中国にかけたことが発端です

そのアメリカの方針に中国政府は反発し、報復関税という形でアメリカに関税を課しました。このような水掛けが現在も続いており、2019年5月にもトランプ氏が対中関税の引き上げをツイッターで予告して上海市場の上海総合指数は1日で5.5%安となるなど、簡単には解決しそうにありません。

というのも、米中互いの国にとって、相手は最大のライバル国であり、この先数十年の覇権をどちらが握るのかという争いでもあるのです。数年前まではアメリカ一強の時代でしたが、中国がすさまじい勢いで成長し、GDPも今では日本に大きな差をつけて世界第二位です。

2000年代初頭は外国資本に助けられて「世界の工場」として成長していましたが、今や技術力、資本力で世界トップレベルとなっています。スタートアップの乱立する深圳はシリコンバレーを凌ぐとも言われ、世界の時価総額ランキングのトップ10にはアメリカ企業8社と中国企業2社がランクインしており、米中二強の構図は誰の目にも明らかです。

このような状況の中、中国を放っておくとアメリカですら中国に経済力で抜かれてしまう可能性が出てきましたそこで、アメリカは中国に関税を課し、ファーウェイに代表される中国製品を締め出すという措置を取りました。

アメリカは世界一の座を譲る気は全くありませんし、大統領は強硬派のトランプです。一方で中国もこのチャンスを逃すわけには行かないと思っているでしょうから、米中の争いはこれからも続くと考えられます。

この争いの状況によって株価が大きく動き、景気に影響を与えますので、注視しておく必要があることは間違いありません。

東京オリンピック・パラリンピック

2020年のオリンピック・パラリンピックが東京で開催されることが決定されて以来、建設ラッシュとなっています。

実際に五輪の競技で使われる競技場を新しく建設するだけでなく、既存の競技場を新しくしたり、選手村も一部改築が行われている場所もあります。その他、五輪とは直接関係のない建物も2020年に完成するように工事が行われることが多いです。

2020年東京オリンピックという一大イベントに向けて多くのお金、人材が動いているのです。そのため、2020年を過ぎると大きな建設需要は無くなってしまうことが予想できます。オリンピックがなければ2021年やその翌年あたりに建てる予定だった建物も、前倒しして建設していますので、2021年以降、建設業は寂しい時代が来るかもしれません。

チケットの申し込みも始まり、日に日にオリンピックムードになっていくと思いますが、必ずしもポジティブではいられないというわけです。

実際、過去オリンピック・パラリンピックを開催した都市では、開催以後に景気の落ち込みが起こっています。こういった反動の可能性を考慮に入れて転職のタイミングを図ることも大切です。

北朝鮮問題

最近は比較的落ち着いている北朝鮮ですが、米国との関係次第では再び瀬戸際外交に転じるかもしれません。

北朝鮮は中国と仲が良いですから、米中貿易摩擦の問題に絡む可能性もあります。仮に北朝鮮がなんらかの問題行動を起こせば、海を挟んで隣の日本にも緊張が走ることは間違いありません。

地政学的リスクは経済にも大きな影響を与えますから、注意が必要です。しかし、この北朝鮮の問題はプラスに転じる可能性もあるのです。

米中が核の保持などに関して合意形成に成功すれば、北朝鮮への経済制裁は解除され、国交が開かれるでしょう。

現在の北朝鮮はアジアでもトップレベルに貧しい国ですから、隣国からの投資が相次ぎます。日本の隣に新たな投資先が出現し、観光の面でもさらなる良い効果が期待できます。

実際、世界三代投資家の1人であるジムロジャースは朝鮮半島が統一されることを予想しています。どちらにせよ、北朝鮮の動向には気をつけるべきでしょう。

転職を成功させたいならまずは情報収集

以上は2019年転職市場とマクロ経済の関連について紹介させていただきました、いかがでしたか?

2010年以降の日本経済は概ね堅調なイメージがあるなかで、新卒市場は売り手市場が続くとともに転職市場も流動的です。

しかし、景気の先行きには不透明な部分もありますから、転職を考えているのであれば、将来性のある職種を選ぶだけではなく、グローバルな景気状況への配慮も必要です。

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